西武ライオンズ,優勝

トップページ > 埼玉西武ライオンズ
2018年10月01日

埼玉西武ライオンズリーグ優勝までの10年間の軌跡 後編

  • ノーリミット打線に匹敵する山賊・獅子威し打線
  • 弱体化した投手力を補ったバランスの良い野手陣
  • やはり辻発彦監督だからこその優勝だったと思う

2018-10-01a.png

2018月9月30日、埼玉西武ライオンズが2008年以来10年振りのリーグ優勝を果たした。本記事前編では10年間優勝から遠ざかった要因に関する私見を述べてみたわけだが、後編では今季ここまでの戦いができた要因について考えてみたいと思う。


今季は開幕8連勝から始まり、一度も首位を譲ることなくリーグ優勝を達成した。一度も首位の座を譲らずに優勝したのはパ・リーグでは56年振りという快挙だった。途中首位を陥落しそうになったこともあったがそれでも一度も明け渡すことなく、最後まで1位というポジションを守り続けた。辻発彦監督は、選手が良ければ監督は誰でもいいのではないか、というコメントをされていたが、そんなことはないと思う。辻監督は選手を育て、活かすことが非常に上手い監督だった。例えばこれはタイガースの金本知憲監督は真逆だったと思う。

金本監督の場合は自らの理想を選手に押し付けることが多い。例えば鳥谷敬選手に長打を求めたり、藤浪晋太郎投手に本来持つ以上の制球力を求めたり。その結果選手を活かすどころか、選手自身が低迷してしまうケースが非常に多かった。しかし辻監督は自らの考えを選手に押し付けるのではなく、選手個々が持つ特性を活かすマネージメントを行った。そして選手がミスをしても選手を責めることはせず、ミスをした選手に挽回のチャンスを与えることも非常に多かった。逆に金本監督はミスをした選手をすぐに2軍に送り返してしまったり、懲罰を与えたりした。そのために選手たちが伸び伸びプレーすることも、ミスを恐れずにプレーをすることもできなくなってしまう。

筆者は辻監督に言いたい。いくら選手が良くても監督がダメなら試合には勝てない、と。辻監督の指導はとても厳しいと思う。と言っても怒ったり怒鳴ったりするのではなく、上達するまで根気よく練習に帯同し、選手をいつも見守るという厳しさだ。常に監督に見られていれば選手は手も気もを抜けず、長時間集中力を維持し続けなければならない。そしてこのような状況を常に経験することによって、選手の自主性は磨かれていく。最初から選手の自主性を重んじてしまう監督もいるが、しかしできない選手に自主性を求めても意味はない。自主性はそれが磨かれたのちに重んじるべきものであり、そのためにも最初の1〜2年は自主性を磨くための下準備が必要となる。辻監督はそういう下地作りに余念がなかったし、できない選手に対し、できない状態のままで何かを選手に求めることはしなかった。

例えば筆者は、広島カープは緒方孝市監督ではなく、野村謙二郎監督のままでも優勝できていたと思う、と書いた。しかしライオンズはそうではなかっただろう。辻発彦監督でなければ今季の優勝はなかったはずだ。以前辻監督は体力的には2年、というようなことを仰っていた。恐らくこれは2年間できることをやって結果が出なければ、3年目も監督をやるつもりはない、ということだったのだろう。そういう覚悟を持って挑んでいたこの2年間だったというわけだ。そして今季勝ったことにより、辻監督の続投はもはや既定路線となったと言える。

今季のライオンズはバランスが良かった。まずチーム全体を同じ方向へと向かせられる監督の存在があり、さらに松井稼頭央選手という大ベテランがいて、10年前の優勝を知る栗山巧選手、中村剛也選手の存在があった。松井稼頭央選手に関しては、2008年に優勝した際の江藤智選手のような存在となっていたように感じられる。成績自体は決して芳しくはなかったが、ベンチにいてくれるだけで選手たちにとってプラスになれる存在だ。松井稼頭央選手と江藤智選手の共通点として、あまり先輩風を吹かせない親しみやすい人柄というものも挙げることができる。松井稼頭央選手はまさに今季、選手たちのメンターだった。

そしてシーズン序盤は上向かなかった栗山巧・中村剛也両選手も、気温が上がるのに比例して成績を上げて行った。そして夏場以降はまさにレギュラーとして欠かせない存在になっていた。この同学年コンビの存在もやはりチームにとっては大きかった。優勝する大変さを知っているし、苦しい時にどうすればいいのかも知っている。チームが迷った時に指針となったのが、この2人の存在だったと思う。

大ベテラン松井稼頭央選手、ベテラン栗山・中村両選手、そしてその背中を追い駆ける中堅であり主将でもある浅村栄斗選手と秋山翔吾選手。そして駆け出し中の源田壮亮選手、外崎修汰選手、山川穂高選手、森友哉捕手。今季5番には外崎選手、森捕手、栗山巧選手が座ることが多かったわけだが、山川選手は非常に楽だったと思う。5番に座った選手が軒並み結果を残しているため、相手投手は4番打者との勝負を避けるわけにはいかなくなる。仮に簡単に山川選手を歩かせてしまうと、大量失点に繋がってしまうケースが増えてしまうからだ。

そのため敬遠気味の四球は、ホームランの数にしては決して多くはなかった印象がある。以前4番に座っていた中村剛也選手の場合、5番打者が打てない時期が非常に長く、それによって勝負を避けられてボール球に手を出すようになり、調子を崩してしまうことも少なくなかった。しかし山川選手の場合は勝負してもらえるケースが多いため、無理にボール球に手を出す必要がない。そのためにしっかりとボールを見極めることもでき、選球眼が良いという評価にも繋がっている。

ライオンズには2014年にホームラン王になっているエルネスト・メヒア選手の存在がある。しかし今季のメヒア選手は8〜9番を打つことも多く、出番自体も非常に少なかった。さて、このメヒア選手に関しては来季が3年契約の3年目となる。今季は大きな活躍を見せられずに終わりそうだが、契約最終年の来季は果たして汚名返上と行くのだろうか。だがしかし推定年俸5億円で今季の仕事振りでは困ってしまう。外国人選手はここぞという時の集中力が高いケースが多い。メヒア選手もそのような能力を持っていると思われるため、CSと日本シリーズの短期決戦では爆発に期待したい。

さて、今季は決して目立っていなかったわけだが、炭谷銀仁朗捕手の存在も今季の優勝には大きかったと思う。炭谷捕手はFA権を有しているわけだが、ライオンズで優勝するために行使せずにいた。もし炭谷捕手の存在がなければ、森捕手や岡田捕手が好リードを見せられた試合は減っていたかもしれない。出場試合数こそ少なかったが、しかし炭谷捕手は試合に出ていなくても常にライオンズの扇の要でい続けた。本音を言えばもっと試合に出たかっただろうし、他球団であれば全試合出場も可能だったかもしれない。だがそれでも炭谷捕手はライオンズを出ることなく、ライオンズでの優勝にこだわり続けた。それにしても2006年、涌井秀章投手と10代バッテリーを組んで試合に勝ったあの日が懐かしい。もう12年も前の話だ。

打撃陣に関してはまさに文句なしというべきだろう。長打もあれば走力もある。3〜4年前までは守備力で負けることも多かったが、ショートストッパーとして源田選手が固定されて以来、ライオンズの守備陣は非常に引き締まった。ここまでの守備力がある正遊撃手と言えば、松井稼頭央選手以来だと言えるだろう。遊撃手としてのタイプはまったく異なるが、総合的な守備力で見れば、本当に久し振りに固定できた守備力のある遊撃手だった。センター秋山選手、セカンド浅村選手を含め、やはりセンターラインがしっかりしてくると野球は安定してくる。

ただし投手力に関しては本当に低かった。チーム防御率はパ・リーグで唯一の4点台だし、最多勝が有力である多和田投手にしてもエースとしての勝ち星は決して多くなく、打線の援護によって勝つ試合も多かった。少し持ち直してはきたが、3.94という防御率にもそれは現れている。15勝5敗という数字は素晴らしいが、しかしWHIP1.29というのはちょっと悪すぎる。エースの数字ではない。

だがそれでも優勝したのだから、これは本当に素晴らしい。今季の山賊打線とも獅子威し打線とも呼ばれた打線は、2008年に優勝した時のノーリミット打線に匹敵する、いや、それ以上の破壊力を持っていた。野手陣に関しては代打の専門職が手薄だったことを除けば、本当に文句のつけようのないものだった。ライオンズにはぜひこの勢いのままCS、日本シリーズへと突入して行ってもらいたい。そしてできるならば、ライオンズ対カープという優勝チーム同士の日本シリーズを観たいと筆者は切に願っている。






日刊野球ネイションの記事はすべて筆者ことKazuが個人見解の元、すべてオリジナルで作成いたしております。無断転載はお断りしておりますので、転載・転用をご希望の方は必ずご一報くださいませ。ご協力よろしくお願いいたします。
日刊野球ネイション
Copyright(C) 2015-2018 日刊野球ネイション All Rights Reserved.