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2016年10月01日

秒読みとなった辻発彦監督の誕生、西武のヴィジョンとは?!

  • 12球団で唯一3桁の失策、西武新監督は辻発彦コーチ?!
  • 奈良原浩コーチの指導力がなかったわけではない西武の低守備力
  • なぜ編成の長である鈴木葉留彦本部長は責任を取らない?!


パ・リーグTVより
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埼玉西武ライオンズの2017年組閣が少しずつ進んでいる。成績不振の責任を取り田辺徳雄監督が辞任したわけだが、その後任としてドラゴンズの辻発彦コーチの監督就任が確定的となっている。辻監督が誕生すれば、辻コーチは実に21年振りにライオンズのユニフォームを着ることになる。


だが監督人事の裏側で、筆者には大きな不満がある。田辺監督の辞任と時を同じくし、奈良原浩内野守備走塁コーチが解任された。これは今季のライオンズのエラー数が101個で、12球団で唯一、三桁を記録してしまったことの責任を取らされたということなのだろう。だが筆者は奈良原コーチの解任に対し大きな不満を抱いている。

奈良原コーチと言えば現役時代、名遊撃手たちがこぞって「名手」だと評していたほどの守備の達人だ。そして地道な守備指導にも定評がある。しかしそれでもライオンズのエラー数は減らなかった。それは何故なのか?答えは簡単だ。ライオンズのスカウト陣が、守備の基礎をしっかり持っている選手を連れてくるのではなく、ただ身体能力が高い選手ばかりを集めてきているからだ。

いくら身体能力が高いと言えど、アマチュア時代に守備の基礎が叩き込まれていなければ、プロに入って1〜2年で守備が根本的に上達することはまずない。それは中島宏之選手の長年の守備を見ても明らかだ。奈良原コーチはライオンズで5年間コーチを務めたわけだが、その間、一塁手と三塁手に関しては中村剛也選手と外国人選手が多くを務めていた。

二塁手と遊撃手に関しては、片岡治大選手と中島宏之選手が在籍していた頃はほとんど固定されていた。その後はまず浅村栄斗選手が正遊撃手に名乗りを上げたが、打撃と守備をなかなか両立させることができず、一塁にコンバートされ、今は二塁手を務めている。つまりバッテリーを除く7人の野手の中で最も重要な遊撃手を、ライオンズは数年間固定できずにいるということだ。

近年ライオンズに在籍した遊撃手で、守備の基礎がしっかり叩き込まれている選手と言えば、原拓也選手(原選手はメンタルで力んでしまいエラーは少なくなかったが)と浅村栄斗選手ではないだろうか。だがライオンズは、原選手に涙を流させオリックスに放出してしまった。奈良原コーチと原選手は1年だけライオンズで被るのだが、原選手がもう少し長くライオンズでプレーできていれば、きっと名手と呼ばれるだけの選手になれていただろう。

近年ライオンズで遊撃手を務めたのは中島宏之選手以降、浅村栄斗選手、鬼崎裕司選手、金子侑司選手、永江恭平選手、外崎修汰選手、呉念庭選手らがいる。この中で守備が本当に巧いのは永江選手のみと言うべきだろう。鬼崎選手も守備が非常に巧い選手ではあるが、強い打球にグラヴが負けてしまうという弱点を抱えている。

金子侑司選手は正遊撃手の筆頭候補ともされていたが、結果的には総力を買われて外野手として起用されることも多かった。金子侑司選手の場合、重心を高いところに置いてプレーすることが多い。特に送球時にそれが顕著であり、原拓也選手の重心の低さと比較をすると雲泥の差だ。

重心が高くなれば踏ん張る力が弱まり、上半身の動きに頼って送球をするしかなくなる。上半身、つまり肩を動かすことによってボールを投げようとすれば、送球したい方向と異なった方向に遠心力が働き制球力を低下させてしまう。また、手首を使って投げやすくなってしまうため、上から投げれば上下の制球、横から投げれば左右の制球が低下してしまう。つまり手投げと呼ばれる動作だ。

金子侑司選手の内野手としての弱点は、奈良原コーチは当然気付いていた。そのため徹底した基礎練習を課していたわけだが、その基礎が金子侑司選手の体に染み込むまでにはもう少し時間が必要だったのだろう。

ライオンズが奈良原コーチを解任すると、即座にドラゴンズが奈良原コーチの獲得に名乗りを上げた。ライオンズのフロントは何もわかっていない。奈良原コーチに指導力がなかったのではなく、フロントが獲得してきた選手に守備の基礎力がなかったということを。そして愚かにも守備の達人で指導力も高く、日本代表ヘッドコーチの経験もある奈良原コーチを解任してしまった。

さて、筆者にはさらなる不満がある。それは鈴木葉留彦球団本部長が2017年も同職に就くということだ。監督、コーチ、選手を集めてきたのはすべてGM同等である編成の長、鈴木球団本部長だ。鈴木球団本部長は2012年シーズンから同職に就いたわけだが、12〜13年シーズンは渡辺久信監督の手腕によりチームは何とか2位で堪えた。だが14年シーズンからは3年連続Bクラスに転落している。にも関わらず編成の長である鈴木球団本部長は責任を果たさず、監督やコーチの首をすげ替えるだけですべてを済まそうとしている。

これがメジャーリーグであれば、成績不振が続けばGMは監督よりも先に解任されるケースもある。映画で言えばGMとは人事権を持つプロデューサーであり、監督はディレクター、選手は俳優ということになる。映画のヒットは人事ですべてが決まると言われている。どんなに素晴らしい脚本があったとしても、人事に失敗をすれば映画はヒットしない。だが多少脚本が弱くても、人事に成功すれば世界的大ヒットを記録することがある。そのためか映画の作品賞はディレクターではなく、プロデューサーに贈られる。

鈴木球団本部長は明らかに人事に失敗している。中島宏之選手、片岡治大選手(元々は遊撃手)という球界を代表するレベルの遊撃手を立て続けに流出させ、その補填がまったくなされていない。しかも原拓也選手に関しては、中島宏之選手がメジャー移籍したのと同じタイミングでトレードに出している。しかもそのトレード相手は選手としては完全に下り坂となっていた山崎浩司選手だ。当時としては右打者が欲しかったのだろうが、右打者の補填の仕方を完全に間違えている、と当時筆者は感じていた。

ここで黄金時代を思い返してみると、遊撃手を務めていたのは上述の奈良原浩選手の他、石毛宏典選手と田辺徳雄選手だった。いずれの選手も守備の基本が体にしっかりと染み込んでいた選手であり、しかもプロ入り後も故根本陸夫氏の方針により、守備の基本練習を徹底させられていた。それは遊撃手ではなかったものの、辻発彦選手も同様だ。

辻選手の場合プロ入り直後は、二塁手としては182センチと身長が高過ぎると言われ続けていた。つまり体が大き過ぎて二塁手として必要な小回りが利かないという考え方だ。だが徹底した守備の基本練習により多くの野球評論家の予想に反し、辻選手は8回もゴールデングラブ賞を獲得している。

今月、プロ野球ドラフト会議が開催されるわけだが、ライオンズはもう身体能力で選手を選ぶべきではない。正遊撃手を育てたいのであれば、まず遊撃手として本能的な動きができ、そして守備の基本がしっかりと体に入っている選手を獲得するべきだ。もう荒削りの選手など必要ない。例えば美沢将選手などは、身体能力だけでプロに連れてこられ、ライオンズに翻弄されてしまった選手だと言えるだろう。

辻発彦監督の就任が正式に決まれば、きっと素晴らしい監督になってくれると思う。だがチームの守備力を上げたいから辻監督を誕生させるだけでは、フロントの仕事としてはあまりにも素人考えだ。

鈴木葉留彦球団本部長にGMとしての能力がないことは数字を見ても明らかだ。今季ライオンズの総年俸は約28億円だが、リーグ優勝を果たしたファイターズは約27億円なのだ。それぞれ12球団トップのホークス約53億円の半分程度であるわけだが、ファイターズの場合は必要な場所に必要な選手を的確に補強できているために毎年のように優勝争いに加わり、栗山監督の5年間では二度優勝し、Bクラスは一度しかない。

例えばだが、石毛宏典氏は根本陸夫氏の教えを最も強く受けている選手の一人であり、守備の基本練習の大切さも深く理解されている。石毛氏がよく使う「ファンダメンタルポジション(基本姿勢)」をライオンズの若手に徹底していくために、石毛2軍監督というのも筆者は魅力的だと考えている。

仮に渡辺久信GM、辻発彦監督、石毛宏典2軍監督、潮崎哲也1・2軍巡回コーチというようなスタイルを取れば、ライオンズが今どのようなヴィジョンでチーム作りをしようとしているのか、そのメッセージはしっかりとファンに届いていくはずだ。だが現状では奈良原コーチを解任し、名手を獲得してくることもない。毎年のように守備力の低さが嘆かれているチームの行動とはとても思えず、鈴木葉留彦球団本部長がどのようなヴィジョンを持っているのかも伝わってこない。

一般企業であってもヴィジョンがなければあっという間に淘汰されてしまう。ライオンズは今まさに、他球団に淘汰されつつある状況だとは言えないだろうか。筆者はライオンズに対し強い愛着を持っているからこそ、ついこのように考え過ぎてしまうのだが、果たして他のライオンズファンはどのような思いで現在のライオンズを見つめているのだろうか。





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