
一昔前の野球ファンからすれば、これを高額過ぎると感じることもあるだろう。だが日本プロ野球の発展を考えていくのであれば、結果を残せば5億円を貰えることが普通になっていってもらいたいと筆者は考えている。
だがその杉内投手の年俸が、来季は10分の1となる5,000万円まで下がることになってしまった。これはジャイアンツが一方的に減封を強いたわけではなく、杉内投手自身が申し出た減封だったようだ。今年10月1日、杉内投手は右股関節の手術を受けている。下半身主体で投げられている左投手にとって、右股関節は命のような部位だ。トミージョン手術のように事例が増えてきた手術とは異なり、股関節の手術をする野球選手はそれほど多くはない。そのため肘にメスを入れるよりも、ある意味ではハイリスクと言うこともできるだろう。
今季、杉内投手とジャイアンツの4年契約は終了した。だがジャイアンツは、ジャイアンツの選手として杉内投手が手術を受けることを認めたのだ。この球団の対応に対し杉内投手も胸を打たれ、自ら減封を申し出たと言う。だがそれにしても年俸5億円から4億5,000万円減というのは、想像することも難しい事態だ。お金の扱い方が上手くない選手であれば、間違いなく所得税や消費税を支払えない事態になるだろう。
股関節というのは非常に重要な部位だ。専門的に見れば実は肩肘よりもずっと大きな影響をボールに与えられる部位となる。投球動作の専門家である杉内投手であれば、当然そのあたりのこともしっかり理解し、リスクを承知の上で手術を決断したのだろう。もしくは手術以外の選択肢がない状態になってしまっていたということも考えられる。
今回の減封に関する会見も、杉内投手が移動困難ということで開かれることはなかった。つまり手術を受けてまだ2ヵ月で、杉内投手は満足に歩くこともままならない状態ということなのだろう。ここから来季投げられるようにリハビリを続けていくことは、本当に過酷なことだと思う。野球選手にとってのリハビリは、トレーニングよりも遥かに辛いことだ。
だが杉内投手のタフな心があれば、その過酷さもきっと乗り越え、2016年中に東京ドームのマウンドに戻ってきてくれるに違いない。恐らく交流戦中に間に合う可能性はないだろう。だが秋までになんとか戻ってきてくれれば、もしかしたら日本シリーズで盟友であるホークス和田毅投手との投げ合いも見られるかもしれない。
杉内投手は来季は36歳となり、不惑の歳へとまた一歩近づいていく。松坂世代もいつの間にかそんな年齢になってしまっている。だが世代の主役である松坂投手をはじめとし、杉内投手や和田投手には40歳を超えるまで1軍で投げ続けてもらいたい。そして生き字引として、そのレベルの高い技術を後進たちが見て学べるように、松坂世代にはまだまだグラウンドに立ち続けてもらいたいと、筆者は今怪我に苦しんでいる杉内投手や松坂投手に対し思いを馳せているのであった。
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