
しかし大城選手は期待に応えることはできず、この試合で実質4失策を犯してしまう。2つは記録上正式な失策で、もう2つは強い打球を弾いてしまい内野安打にしてしまうというミスだった。大城選手は決して守備力が低い選手ではない。仮に守備力が低かったとしたら、高校時代から遊撃手を任されることはなかっただろう。しかも名門興南高校と、立教大学に於いて。
やはり期待に応えようとし過ぎて少し硬くなってしまったのだろう。いくらプロの強烈な打球だったとは言え、普段の大城選手であれば処理する能力はあったはずだ。初回に1つ目の打球を捕り損ない硬くなり、3回には2つ目の強い打球をまた捕り損なってしまう。そしてこの2つのミスにより完全に浮き足立ってしまったのだろう。4回にはもう1つ失策をし、その直後にランダウンプレーで普通の送球を捕り損なうという通常ではほとんど有りえない失策を記録してしまう。
この連続したミスが福良淳一監督の逆鱗に触れてしまった。何と大城選手はこの試合中に2軍降格を命じられ、同時に隣の球場で行われていた2軍戦にそのまま合流させられてしまった。だが福良監督は失策そのものを怒っていたわけではないようだ。大城選手がミスに浮き足立ち、覇気のない状態でプレーを続けたことに対して怒りを示している。
これは至極当然の怒りだろう。ナインに闘志のない者がひとりでもいれば、チームの士気は大幅に低下してしまう。優勝を目指しているバファローズにとって、士気の低下だけは何としても避けたいところだ。福良監督は大城選手に対し厳しい対応をすることにより、キャンプの疲れで気の緩みが出やすいこのタイミングを上手く乗り切ろうとした。これは監督としては英断だったと思う。
福良監督の内心としては、ルーキーである大城選手に対しここまで厳しい対応をするのは、親心も傷んだはずだ。だが大城選手の将来を憂いるよりは、今ここでプロの厳しさを最初に味わわせて這い上がらせた方が良策だと踏んだのだろう。まるでライオンが子どもを谷底に落とし、這い上がってきた子だけを育てるという獅子の子落としのように。いや、この場合は猛牛の子落としと言うべきだろうか。
まだ右も左もわからないようなルーキーが、ここから這い上がってくることは容易くはない。だが時間をかけてでも一歩一歩着実に這い上がってくることができれば、大城選手はきっとリーグを代表するような打てる遊撃手へと成長していけるはずだ。そして福良監督も這い上がってきてくれるはずだと確信したからこそ、あえて大城選手に過酷な道を歩ませたのだと筆者は信じているのである。
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