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2016年05月07日

田中将大投手のフォーシームはなぜメジャーで通用しない?!

  • フォーシームストレートを封印した田中将大投手
  • 田中投手のフォーシームはなぜメジャーで通用しないのか?!
  • なぜメジャーリーガーはほとんどフォーシームを投げないのか?!

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5月5日のボルティモアでのオリオールズ戦、ヤンキースの田中将大投手はフォーシームを1球も投げなかった。いわゆる普通のストレートのことであるが、今季田中投手のフォーシームの被打率は.400となっていた。この数字を持ってして田中投手の「僕のフォーシームは通用していない」という言葉になる。ではなぜ田中投手のフォーシームはメジャーで通用していないのか?



まず日本のプロ野球を見ていくと、近年は増えてきているとは言え150km/h以上のボールを投げられる投手はまだ少数派だ。つまり打者は投手が投げる生きた150km/hのストレートを打つ練習がほとんどできないのだ。マシンが投げる150km/hと、スピンの効いた生きた150km/hのボールとでは、打ちに行った際の感覚はまったく異なる。

例えばバッティングセンターで150km/hの打席に入っても、野球経験者であれば慣れればすぐに打てるようになる。だが生身の投手が投げるスピンの効いた150km/hのボールは、そのボールが来るとわかっていてもなかなか打つことはできない。

日本では150km/hを投げる投手がまだ少数派であるため、田中投手のフォーシームも十分に通用していた。だがメジャーリーグでは150km/hを投げる投手は珍しくないし、160km/h近いボールを投げる投手もゴロゴロいる。つまり田中投手は日本では随一の剛腕投手だったが、メジャーでは決して剛腕の部類には入らないということなのだ。

そして田中投手のフォーシームがメジャーで通用しない具体的な理由だが、バックスピンの角度に関係していると筆者は見ている。田中投手は時々サイドハンドスローにも見えるようなスリークォーターで投げている。球速をアップさせるためにはスリークォーターは有効であるわけだが、しかし空振りを取れるフォーシームを投げるためにはスピンが傾き過ぎてしまう。

フォーシームストレートは、バックスピンの角度が垂直に近づくほどマグナス力が高まり、まるでホップしているように見えるボールになる。だが田中投手のフォーシームはバックスピンの角度が大きく傾いているため、マグナス力がそれほど働いていないのだ。そのために打者目線で見ると、手元でわずかに失速しているように見える。

これはプロに入り立ての頃の松坂大輔投手にも共通して言えることだが、田中投手も体が大きくなるにつれて少しずつ腕が下がって来ているように見える。だがこれは決して悪いという意味ではない。投げるボールの種類が変わってくる、という話だ。楽天に入り立ての頃の田中投手は、もう少しオーバーハンドスローに近い角度から投げていた。だがメジャー入りする頃には完全にスリークォーターまで腕が下がって来ている。

もちろんこれは田中投手自身意図してのマイナーチェンジだとは思うのだが、この腕の角度の変化によってバックスピンが傾いてしまい、マグナス力が働かずに、空振りが取りにくい状態になってしまっている。だがスピードガン表示を楽に上げるという意味と、変化球のキレという意味では、スリークォーターにするメリットは大きい。そういう意味ではオリオールズ戦、田中投手はツーシーム、スライダー、スプリッターを中心に配給を組み立てたわけだが、これはピッチング・モーションとピッチング・パフォーマンスが噛み合った論理的な組み立てだったと思う。

メジャーは中4日が基本であり、とにかく球数を減らせることに越したことはない。そういう意味では三振をたくさん奪いに行くよりは、この試合のようにゴロを打たせるグラウンダーとしてのピッチングの方が、疲れを最小限に抑えることができる。

フォーシームを投げるのをやめたというのは、決して後ろ向きな判断ではない。このような話をすると、変化球ばかり投げていては肩肘への負担が大きくなる、という話も出てきそうだがそれは事実ではない。確かにストレートと変化球の腕の振りが違う、技術の低い投手の場合はそういうことも言える。しかしストレートと変化球を同じ腕の振り、つまり肩関節の内旋過程によって投げられている場合、ストレートと変化球を投げた時の肩肘へのストレスはほとんど変わらないのだ。

ただ、スプリッターに関しては指から肘へと繋がる筋肉の使い方が少し変わってくるため、肘がロックされやすい。だがこれもスプリッターを投げる割合の問題であるため、フォーシームを減らしてもスプリッターの割合が増えていなければそれほど大きな問題にはならない。

メジャーリーグでフォーシームを投げる投手は少ない。基本的にはシームは2つしか使わず、シームに対する空気抵抗を大きくすることによって打者の手元でボールを動かしている。ツーシームとフォーシームとでは球速はそれほど変わらないため、同じ球速ならボールが動いていた方が少ない球数で打ち取りやすい、ということになる。そのためにメジャーではツーシームが主流となっているのだ。

そういう意味では田中投手は今、ようやくメジャーリーグタイプのピッチャーになったと言えるのではないだろうか。田中投手のツーシームはシンカーのような動きを見せるわけだが、このボールが打者の左右を問わず有効的となっている。だからこそ今後例え1〜2試合失敗したとしても、しばらくはフォーシームを封印するピッチングを続けてもらいたいと筆者は考えているのである。なぜならばそれによって球数を大幅に減らすことができるからだ。






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