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2016年05月16日

シャーザー投手はなぜ20奪三振を達成することができたのか?!

  • シャーザー投手がメジャー史上4人目の20奪三振達成
  • なぜシャーザー投手の奪三振率は高いのか?!
  • メジャーでは珍しいフォーシームを投げるシャーザー投手

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5月11日のデトロイト・タイガース戦、ワシントン・ナショナルズのマックス・シャーザー投手が20奪三振という偉業を成し遂げた。これはメジャーリーグ史に於いて4人目の快挙となる。シャーザー投手はメジャーリーグでは珍しいフォーシームの使い手であるわけだが、しかし純粋にフォーシームストレートとして投げているわけではなく、ツーシームのように動かして投げていることもある。

シャーザー投手はスリークォーター気味には投げているが、実際にはサイドハンドスローと見ていいだろう。サイドハンドスローでフォーシームを投げたとしても、綺麗なバックスピンストレートを投げることはできない。にも関わらずシャーザー投手の今季通算の奪三振率は20%を超えている。

シャーザー投手の最大の特徴は角度のないストレートだ。先日の記事で大谷翔平投手のストレートについて少し書いたが、シャーザー投手のストレートには角度がないため、打者としては距離感がまったく測れないのだ。しかもストレートと同じ腕の振りでメジャーナンバー1とも称されるスライダーが来るのだから、打者としてはひとたまりもない。

日本球界では未だに「角度角度」と言われているが、実際には角度を付けるほど打者はボールを見やすくなるし、投手の方への負担は大きくなる。しかしシャーザー投手のように投球の軌道から角度を奪ってしまうと、打者は18.44メートルの間で、ボールが今どのあたりを進んでいるのかという距離感がまったく取れなくなる。そのためにタイミングを合わせることができず、合わせられたとしても時すでに遅く、そこから振り出したとしてもバットにボールを当てることができない。さらにはシャーザー投手は肩肘の大きな故障も経験していない。

シャーザー投手はいわゆるツーレーンピッチャーだ。スライダーと、シュートするフォーシームストレートで左右にボールを散らせている。内野手経験のある方ならおわかりいただけると思うが、内野手というのは基本的にはサイドハンドスローで投げる。そしてその距離が長くなるほどボールはシュートしていくため、捕手、遊撃手、三塁手であればシュートする前提でボールを投げていく必要がある。

内野手が投げているそのシュートボールが、シャーザー投手のフォーシームシュートだと思っていただければわかりやすいと思う。ナチュラルシュートとでも言うべきだろうか。ひねるわけでもなく、あえて回転を与えているわけでもなく、ボールの回転方向を上手く使ったシュートボール(もしくはシンカー)だ。

ちなみにフォーシームを回転が良い、ツーシームを回転が不規則、と表現することがあるが、これは適切ではない。例えばバックスピンという意味ではフォーシームもツーシームもまったく同じ回転をする。ツーシームが不規則な回転をすることはないし、フォーシームだからと言って回転が必ず綺麗だというわけでもない。では何が違うのか?

それは空気抵抗だ。フォーシームは空気抵抗を4つのシームを使って1/4に分散するため、1つ1つのシームにかかる空気抵抗は非常に小さい。そのため打者の手元で多少失速したとしても、そのまま真っ直ぐ進んでいける。一方のツーシームの場合は、2つのシームしか使わないため、空気抵抗は1/2ずつとなる。さらに使うシームの位置がほとんど同じ面であるため、実際には1/2ほど分散することはできない。ツーシームという球種はこのように空気抵抗が大きいため、打者の手元でボールが失速し出すと空気抵抗に煽られ、ボールが僅かに動くようになる。

そういう意味でツーシームを回転が綺麗ではないと表現するのは適切ではないのだ。逆にシャーザー投手のフォーシームストレートはサイドスピンであるため、マグナス力というものを考えれば決してベストな回転をしているわけではない。ただボールに角度がなくあれだけの速度で飛んでくるため、打者がまったくタイミングを計れないという現象が起きているだけなのだ。だけ、と言うと語弊はあるが、それがシャーザー投手の非常にレベルの高い技術ということになる。

こうしてシャーザー投手の技術を冷静に見ていくと、20奪三振もシャーザー投手であれば不思議な数字ではないし、シーズンに二度ノーヒッターを達成しても、シャーザー投手が持つ技術ならば十分に納得することができるのである。





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